映画と本でみるもりおか


広報ID1029358  更新日 令和2年4月22日


映画と本でみる盛岡

すぐそばにある何気ない景色やいつもの街の営み―。それらは、映画や本の舞台として取り上げられるとき、普段とは少し違った姿を見せてくれます。
様々な物語の中に描かれた盛岡の魅力を取り上げるため、特に今、盛岡の若い人たちにお勧めしたい作品を「さわや書店」外商部の栗澤さんからご紹介していただきました。
さらに、本の作者の方から「作品を通して感じた盛岡のこと」や、作品のファンの方による推薦コメントもいただきましたので、ご紹介します。

影裏

[画像]影裏写真(185.8KB)

作品紹介

大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。

北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。
ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。
いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが・・・・・・。

樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。

小説

[画像]影裏書影(42.2KB)

影裏は、沼田真佑さんによって、平成29年に書かれた小説です。沼田さんは盛岡市内の学習塾で勤務しながら、盛岡を舞台とした本作品を執筆し、第122回文学界新人賞を受賞しデビュー、第157回芥川賞も受賞しました。

映画

「オール岩手」を合言葉に、盛岡在住の作家による岩手を舞台とした作品が、盛岡出身の大友啓史監督により、全編岩手ロケで制作されました。俳優の綾野剛さんの主演で、令和2年2月14日に公開予定です。
海南島国際映画祭で、日浅を演じた松田龍平さんがベストアクターを受賞しました。
主人公の生活するアパートのほか、さんさ踊りや、桜山界隈など市民になじみのある風景がたくさん映し出され、自分たちの身近に彼らがいるような体験ができます。

大友監督から

当初、作中でも重要な川でのシーンは市外で撮影することを想定していましたが、米内川上流の風景があまりに美しく、そこでの撮影を決めました。
今回の「影裏」は、オール岩手で撮影し、岩手の人たちが見るからこそ感動できる作品に仕上がったと考えています。クラフトビールがその地元で飲むのが一番おいしいように、地元岩手・盛岡で見るからこそ、よりリアルに追体験できる「クラフトムービ―」として楽しんでもらいたい。私自身も「影裏」を通じて、ふるさと岩手・盛岡の人たちと心を通わせることができればと思っています。

 

[画像]釣りシーン(43.0KB) [画像]桜山界隈の写真(28.5KB) [画像]さんさ踊りの写真(35.8KB)

そして、生きる

[画像]そして、生きるの写真(22.1KB)

作品紹介

3歳の時に交通事故で両親を亡くした生田瞳子(有村架純)は、盛岡で理髪店を営む伯父に引き取られる。天真爛漫に育った瞳子は、時に地元のアイドルとして活躍することもあり、いつしか女優を志すようになっていた。
そして19歳になった瞳子は、東京で開催されるオーディションに挑もうとするが、その前日の2011年3月11日、東日本大震災が起きる。
その年の秋。瞳子はカフェで一緒に働いている韓国人のハン(知英)とともに、気仙沼のボランティア活動に参加する。瞳子はそこで、学生ボランティア団体の運営メンバーである東京の大学生 清水清隆(坂口健太郎)と出会う。穏やかで整然と現場を取り仕切る清隆だったが、瞳子はなぜか彼の微笑みに違和感を覚える。清隆自身もまた過酷な運命を背負っていることを、瞳子は知る由もなかった。そして気仙沼で一緒の時間を過ごした瞳子と清隆は、いつしか互いに特別な感情を抱いていく。

連続ドラマから小説、映画へ

有村架純さんと坂口健太郎さんを主演に迎え、人間ドラマの名手、岡田惠和さんが紡いだストーリーを、月川翔監督が映像化した本作は、WOWOWプライムで「連続ドラマW そして、生きる」として全6話で放映された後、ノベライズ小説化、映画化されました。
盛岡駅前や愛宕山展望台からの景色が美しく、ひっつみ汁や喫茶店の紅茶など盛岡で育った主人公ならではのなじみ深い映像が見どころとなっています。

有村架純さんから(ドラマ放送当時に行ったトークショーより)

(撮影で感じた岩手の魅力)とにかく人が温かいという印象が強いです。ロケの時、いつも温かいご飯を用意してくださったり、撮影の合間に近くの喫茶店でコーヒーを飲ませていただいたり。皆さんがいろんな協力をしてくださったからこそ、自分たちもスタッフさんたちも気持ちよく撮影することができました。夜遅くの撮影になったり、ご迷惑をおかけした事もあったと思うのですが、それでも文句を言わずに撮影に協力してくださったのがうれしかったです。

DVD-BOX発売中

「連続ドラマW そして、生きる」DVD−BOX 3枚組/各Disc2話収録[全6話]
発売日:令和2年3月25日(水曜日)、品番:TCED-4881
価格:11,400円+税、収録内容:本編+特典映像
出演:有村架純 坂口健太郎 知英 岡山天音 萩原聖人 光石研 南果歩 ほか
脚本:岡田惠和、監督:月川翔、音楽:村松崇継

[画像]葺手町の写真(5.6KB) [画像]愛宕山展望台の写真(24.9KB) [画像]開運橋の写真(14.6KB)

君に舞い降りる白(関口尚著・集英社文庫刊)

[画像]君に舞い降りる白書影(21.9KB)

作者の関口尚さんは、栃木県生まれの小説家で、平成14年に「プリズムの夏」で小説すばる新人賞、平成19年に「空をつかむまで」で第22回坪田譲治文学賞を受賞しています。平成19年に文庫化されたこの作品では、岩手大学人文社会科学部を卒業した関口さんが学生時代を過ごした盛岡の情景が、主人公に投影されています。

作品紹介

君に届けたい光があるーー。
鉱石を売るバイトをする大学生の桜井は、客の雪衣に恋をする。しかし、彼女は自分のことを全く話そうとしなかった。そしてお祭りの夜、桜井は雪衣の衝撃的な過去を知りーー。

さわや書店 栗澤さんのお薦めコメント

失恋の痛手から立ち直れない大学生の修二は、透き通る白い肌の雪衣に惹かれていきますが…。
主な舞台になっているのは、紺屋町や上の橋といった中津川界隈。昔ながらの風景が、ふたりをそっと見守り、彩りを添えています。盛岡は、ラブストーリーも似合う町であることを、教えてくれる物語です。

作者 関口尚さんのコメント

盛岡には大学進学でやってきて、その後5年間を過ごしました。初めて親元を離れての一人暮らし。学ぶ楽しさも、働く大変さも、人を好きになることも、みんな盛岡で知りました。ぼくがぼくになった街でした。盛岡で暮らさなかったら小説家になっていなかったでしょう。
北上川と中津川が街を貫き、凛とした空気を持つ盛岡が大好きです。その盛岡を舞台にしたくて書いたのが『君に舞い降りる白』でした。作品を読んで何かきれいなものを感じられたなら、それこそぼくが盛岡という街から受け取ったものなのです。

関口尚さんからサイン入り文庫本のプレゼント!ページ下段の応募フォームからご応募ください。

 

花木荘のひとびと(高森美由紀著・集英社オレンジ文庫刊)

[画像]花木荘のひとびと書影(51.6KB)

作者の高森美由紀さんは、青森県出身、在住の小説家で、「いっしょにアンベ!」で平成24年に第15回ちゅうでん教育児童文学賞大賞、平成27年に第44回児童文芸新人賞を受賞しているほか、「ジャパン・ディグニティ」で第1回暮らしの小説大賞を受賞しています。盛岡を舞台に平成29年に出版されたこの作品は、第84回ノベル大賞で大賞を受賞しています。

作品紹介

盛岡市北上川沿いにある小さなアパート、花木荘。そこに住む人々は少し不器用な人間ばかり。
心の隙間をネットショッピングで埋め、未開封の段ボールに囲まれた生活を送るOL,時計修理に没頭し、うまく人間関係を築けない青年、植木屋の実家を飛び出して、美容師になったものの高いプライドが邪魔をして、客と喧嘩ばかりしている若者。
そんな人々が集う花木荘の管理人 トミは、いつも七輪でにんにく味噌のおにぎりやホタテなんかを焼きながら、ぶっきらぼうに、でも、優しく彼らの心に踏み込んでいく。
不器用な人々が少しずつ周りの人々の優しさに気づきながら成長していく、ちょっと泣けて、ちょっと癒されるハートウォーミングストーリー。

さわや書店 栗澤さんのお薦めコメント

何かで悩んでしまい、立ち止まってしまったら、ぜひ本書を開いてみて下さい。盛岡駅から歩いて十五分、北上川沿いにあるこの小さなアパート。少し不器用な住民たちと、しっかり者の管理人が織りなすこの物語に、癒されることでしょう。 盛岡のまちの持つ包容力が、よく映し出された物語です

作者 高森美由紀さんのコメント

 盛岡を舞台にした理由は、親戚が在住しているということと、盛岡市には三戸町というところがあり、しかも歴史的にも私の町と繋がるところがあったので親近感を持ちました。
印象は、岩手山の裾野に広がる都というイメージです。都市と自然の風景のバランスがいいと思います。
街並みに落ち着きがあり、きちんと保護された歴史的建造物が豊富なところも魅力だと思います。また、迷子になった時にその場所までわざわざ連れていってくださった方もいらっしゃって親切な方が多いという印象です。
街は人を作り、人が街を作るんだな、と思いました。盛岡のそういった魅力を描き出せたら、と思い書かせいただきました。

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※高森さんの「高」は「はしごだか」が正式です。

 

素直なカラダ(東野柚子著・モーニングKC刊)

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作者の東野柚子さんは、盛岡市出身で、現在も盛岡に暮らす漫画家です。アシスタント経験等はなく、独学でマンガを学び、マンガを活用して岩手の文化やくらし、景観、おもてなしの心などのソフトパワーを掘り起こし、その魅力を内外に発信しようと岩手県が取り組む「いわてマンガプロジェクト」において、第3回「いわてマンガ大賞」で大賞を受賞(空木柚子名義)し、コミックいわてwebに複数の作品を発表しています。この作品は、鍼灸を学んだ自身の経験を活かし、「モーニング」で連載されました。

作品紹介

原因不明の頭痛に苦しんでいた栗原かのこは、ひょんなことから東洋医学治療院「輪福玖堂」の鍼灸師、曲直瀬巴と知り合う。かのこの不調を的確に見抜きながらも、頭痛を治すことはできないという曲直瀬。「あなたのカラダを治すのはあなた自身です」曲直瀬の施術を受けたかのこは、東洋医学に興味を抱く。
カラダに不調を抱えるすべての現代人に贈る”読むと元気になる”東洋医学漫画!

作者 東野柚子さんのコメント 

3.11の震災を経て、心に決めた事がありました。それは「恩返しをする事」です。平凡な一市民。沢山の財力を注ぐ事も、大きなアクションも出来ません。私に出来る事は「漫画」でした。私を育み学びを与えてくれた盛岡の街、そして鍼灸の世界を描き色々な方に伝える事で、何か少しでも還元してゆければと思いました。

 

東野柚子さんからサイン入り単行本のプレゼント!ページ下段の応募フォームからご応募ください。

 

3月のライオン(羽海野チカ著/白泉社刊)

[画像]3月のライオン書影(47.0KB)

3月のライオンは、羽海野チカさんによって描かれ、今も「ヤングアニマル」で連載が続いている漫画です。アニメ化や実写映画化などもされ、平成23年に第4回マンガ大賞2011、第35回講談社漫画賞一般部門、平成26年に第18回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しています。本作品の舞台は東京ですが、盛岡が勝負の舞台などで登場します。

作品紹介

東京の下町に一人で暮らす。17歳のプロ将棋棋士、桐山零。
史上5人目の中学生プロデビュー棋士として周りから期待される零だが、彼は幼い頃に事故で家族を失っており、生活の中でも盤上でも、深い孤独を背負っていた。
彼の前に現れたのは、あかり・ひなた・モモの3姉妹。彼女たちと接するうちに、零は心の内に温かな気持ちをゆっくりと取り戻していく・・・・・・。

映画(大友啓史監督)

[画像]3月のライオンパッケージ写真(37.5KB)

3月のライオンは、影裏と同じく、盛岡市出身の大友啓史監督により映画化されています。漫画に描かれた盛岡での対局も再現され、つなぎ温泉や南昌荘でロケが行われました。

本作品のお薦めコメントは、大友監督の出身校である盛岡一高の2年生、伊五澤さんにお願いしました。

盛岡一高2年生 伊五澤綾子さんのお薦めコメント 

3月のライオンには、主人公の桐山と宗谷名人の記念対局の会場と、ちほちゃんという女の子の転校先として岩手が登場しています。これらの場面で共通しているのは登場人物が「再出発」する、もしくはそのきっかけを掴むことだと思います。桐山はこの対局を経てより深い将棋の世界へ足を踏み入れ、ちほちゃんはいじめられていた辛い過去を乗り越え前を向こうとしています。
もしかしたら岩手には人の背中を押す力があるのかもしれません。

 

六三四の剣(村上もとか著・小学館刊)

[画像]六三四の剣書影(52.6KB)

作者の村上もとかさんは、東京都出身の漫画家です。昭和47年に「燃えて走れ」でデビューして以降、様々な作品を発表しています。平成3年から連載を始めた「龍-Ron-」は小学館漫画賞青年一般部門と文化賞マンガ芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞、平成12年に連載を始めた「JIN-仁-」はドラマ化されたほか、手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しています。
盛岡が主人公の生まれ故郷として描かれた本作は、昭和56年の連載開始以降、テレビアニメ化、ゲーム化に留まらず、小学生に剣道ブームを巻き起こした人気漫画で、小学館漫画賞少年部門を受賞しています。

本作品のお薦めコメントは、盛岡市内で読書朝食会”Reading-Lab"を主宰する小笠原さんにお願いしました。

作品紹介

現代の剣豪になれと、両親が願いをこめて命名した名前、六三四(むさし)。故郷の岩手山に見守られつつ、剣の道をつき進む!!

読書朝食会”Reading-Lab"主宰 小笠原康人さんのお薦めコメント 

 この漫画が何よりも素敵なのは「岩手山のある街、盛岡」を強烈に打ち出している点です。何しろ第1話の最初のページから岩手山で始まり、最終話の最終ページも岩手山で終わるのです。こんな漫画があるでしょうか・・・!岩手山を愛してやまない盛岡市民にはたまらない作品です。
 主人公の少年、六三四(むさし)へ、父は岩手山を前にして「父っちゃが世界で一番好きな山だ!六三四、でかぐなれ、あの山のようにでかい人間になれっ!」と語ります。(私はこのシーンが大好きで、就職活動をしていた当時、就職試験の小論文にこのシーンを引用したことを思い出します。)この言葉を胸に六三四は剣道日本一を目指します。

試合で勝った時にも岩手山へ報告です。物語の途中、六三四を悲劇が襲いますが、人前では涙を見せなかった六三四は一人で岩山展望台へ行き、岩手山と対峙して初めて泣きます。岩手山が常に六三四の心の支えになるのです。

盛岡が舞台の中心となっているので、盛岡の風景がたくさん登場する点も見どころです。週刊少年サンデーでの連載期間が昭和56年から昭和60年であったため、その当時の盛岡市内の様子を見ることができるのも楽しいです。盛岡城跡公園内にかつて存在した「武徳殿(ぶとくでん)」という武道場にて剣道大会が開催されている様子や、岩手銀行中ノ橋支店、開運橋、高松の池、中津川など盛岡の名所も、これでもかと登場します。今回、久しぶりに読み直したのですが、昔の夕顔瀬橋を見つけて驚きました。昔の夕顔瀬橋は開運橋のようなアーチがかかっていたのですね。また、カワトクの隣に現在はセブンイレブンがありますが、以前はガソリンスタンドだった描写もあります。

物語を通して六三四や登場人物の語る「盛岡弁」もまた、いい味を出しています。今となってはなかなか聞く機会の無い盛岡弁ですが、この名作の中に残っているのは嬉しいですね。

日々岩手山や盛岡の街並みに親しみを感じている盛岡市民の皆さまに、ぜひ読んで欲しい作品です。

 

(ハル)(森田芳光監督)

[画像](ハル)パッケージ写真(32.4KB)

広報もりおかには登場していませんが、こちらも盛岡が舞台となった作品です。平成7年に公開された本作は、岩手銀行赤レンガ館のそばにあった電光掲示板や、現在はもりおか歴史文化館となっている岩手県立図書館などで今と少しだけ違う盛岡の様子を楽しむことができます。

作品紹介

恋人を亡くし、恋愛を拒否し続けた女(ほし/深津絵里)と、恋人と別れ自分を見失いかけていた男(ハル/内野聖陽)。遠く離れた場所に住む2人は、パソコン通信で出会い、一度も顔を合わせることなく、お互いを理解しあい、支えあい、そして恋に落ちる……。やがて、期待と不安の入り交じった気持ちを胸に"「はじめまして」(^−^)"と出会うまでの軌跡。
そんな、マルチメディアの世界で繰り広げられる"出会い"と"新しい恋愛のカタチ"が現在進行形で描かれた、森田芳光監督、渾身のラブストーリー。


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